電子化されたファイルをもっと戦略的に活用するにはどうすればよいでしょうか?

電子化されたファイルは、文章管理データベース化することでさらに効果を増します。一人、一部署の業務効率向上から、組織全体の社会的責任の達成までに効果があります。

紙資料の電子化の目的

データベース構築

紙資料の電子化の目的は一般に以下のようなものです。社内で同じ言葉を使っていても、その社内の人が思い浮かべているものがそれぞれ違うかもしれません。

  1. 紙の資料ではかさばるし、紛失・破損の恐れがあるから電子化したい
  2. 資料が電子ファイルになったら、きちんと整理して必要なものがすぐに閲覧やコピーできるようにしたい
  3. 文書管理サイクルを確立して業務効率化を図りたい
  4. 電子文書をどこでも見られるようにしたい
  5. 電子文書を公開してステークホルダーにいち早く提供したい

1は簡易なデータベース化で、5になるほど高度なデータベース化と言えます。また1は個人単位の話ですが、5になると不特定多数が相手となります。

電子ファイルのファイリング

上記の目的でいうと2になります。スキャンニングによって1は達成したとして、その次どうするかです。その場合はまずファイリングから始めます。ファイリングとは、ファイルの命名規則を決め、フォルダ構造を定義し、機密度合いやセキュリティによってアクセス権限設定などを施し、保存期間と廃棄タイミングを決めていくことです。
これによってファイルが整理整頓され、適切なルールに則って運用され、業務効率を高めることができます。

スタンドアローンでの文書管理システム

目的の3に対応します。2をさらに進めて、文書管理を会社全体で部門横断的に行い、運用ルールを定め、より高度な文書の品質担保を目指します。これが単なるファイリングと違う点は、文書管理システムと呼ばれるデータベースアプリケーションを利用するからです。
これはアプリケーションによって機能に差異はありますが、概ね、「ラベリング」「廃棄タイミング管理」の機能を持ちます。これらの機能はそもそもOSがあるていど持っているのですが、それをさらに強化させたものがこの文章管理システムと言えます。

強力なラベリング機能

WindowsなどのOSの標準機能でもファイルに属性情報を付与することができますが、それはどちらかと言えばコンピュータ内部でのファイル管理のためであって、今述べている文書管理としてあまり役立つものではありません。
具体的にいうと、たとえばあなたが来期の新商品のプレゼンを2020年1月20日の商品企画会議で行うとして、あとから探しやすいようにそのパワーポイントのファイルにキーワードをラベリングしたいとします。そのとき、OS標準ではファイル名ぐらいしかラベルを入れる場所がありません。その結果、下記のようなファイル名になりました。

【20200120_商品企画会議】【次期新商品_アプリケーション】企画書_20191010作成.pptx

これはかなりくどいですよね。しかもまずいことに、並べ替えや検索といったせっかくコンピュータの持つ機能を十分に利用することができません。
このようなとき、ファイル名とは別にラベルを作っておき、それをファイルに属性情報として持たせることで、探しやすく、並べ替えたりしやすくなります。
例えばこの場合だったら、以下のような情報がラベリングされていれば便利なのではないでしょうか。

  • 会議種類(商品企画会議、商品開発会議、販売促進検討会議など)
  • 会議日時
  • 議案(テーマ)
  • 商品カテゴリ
  • 対象商品

文書のライフサイクルと廃棄タイミング

機密文書や保管期限が決まっている文書は、適切に文書のライフサイクルを管理する必要があります。

  • 文書登録日時
  • 文書登録者
  • 分類
  • 廃棄確認日
  • 廃棄期限
  • 機密情報の有無
  • 文書更新日時
  • 文書更新者
  • 文書更新情報

このようなラベリングをして自動処理プログラムを実行させれば、システムが文書を自動的に廃棄することもできます。システムが機密文章や保管期限の決まっている文書を自動で廃棄すれば人手が介在しませんので、削除し忘れのようなヒューマンエラーを防げます。これによって、情報漏洩などのセキュリティリスクへの安全性も高まります。

イントラネットで社内共有

データベース構築

せっかく資料が電子化されたのだから、どこからでもアクセスできるようにしたいというのは当然出てくるニーズであると思います。先述の目的でいう4になります。

ファイルを遠隔地間で共有する場合、少ないファイルの共有ならばDropboxなどのクラウドを利用するということもあります。しかしこれらのクラウドファイル共有は、非常に便利である反面、便利すぎてセキュリティ上の抜け穴になってしまうという危険性が伴います。機密性の高い文章を扱う場合や、上述のファイル管理データベースアプリケーションを使うほうが良い場合もあるでしょう。
この場合はファイルサーバ(ファイル管理データベースサーバ)を使うことになるのですが、事務所が一つだけならば同じLANの中にそのサーバをおけば良いのですが、本社と支社など2つ以上の事務所にまたがっている場合は社内イントラネットが必要になります。昔はイントラネットというとLAN同士を専用回線でつないでいましたが、最近はVPN(バーチャルプライベートネットワーク)を使うものが多いです。

どのような機器を接続するか、利用ユーザ数、機密性、セキュリティ度合い、文章管理にどこまでの業務改善を期待するかなど、この社内ファイル共有体制の構築はケース・バイ・ケースであって一概にどの方式が良いとか、今の技術的にこれが良いとか、そういうことが言えません。また、実装上はネットワーク技術の話ですが、本質的には業務改善の話であって、技術ドリブンで構築を進めてしまうと思ったような成果が出なかったりします。文章管理の専門家の意見を取り入れるべきところかと思います。

電子ファイルのインターネットでの公開

データベース構築

会社ホームページ作成とは違った意味で、顧客リレーションや企業の社会的責任の文脈で、情報公開の機運が高まってきました。

  • 上場企業がIR情報を公開する。公開用の資料はいつでもダウンロードできる状態にしておくことで株主や社会に対する責任を果たす
  • 大学が教材配布や通知をインターネットで行う。また古文書の公開など研究成果の社会への還元をはかる
  • 地方自治体がオープンガバメントを進めることで、市民のアクセス権を保証する

また、従来のマーケティングの観点から見ても、ファイルの公開というのは大切な先述になってきました。

  • 最新の商品カタログや製品マニュアルをいつでもダウンロードできるようにしておく
  • ハードウェアメーカーが最新のドライバーを配布できるようにしておく

これらは従来からあったわけですが、当たり前になってきたからこそ、大手企業やコンピュータ関連企業だけではない会社にもこのようなことを期待されるようになりました。

これらは技術的には難しいことではありません。会社ホームページとは違うと言っても使用している技術は同じですし、多くの場合その会社や大学や自治体のホームページのコンテンツの一部として公開されることになりますし、最終的にはホームページ作成・更新を担当している部署がファイルをアップロードすることになるでしょう。
しかし問題はそこではなく、公開基準です。オープンガバメントは素晴らしい取り組みですが市民のプライバシーの侵害は避けなければいけませんし、企業が社外秘の情報をホームページに公開していたのでは情報漏えいスキャンダルです。古い情報が掲載されているカタログを公開してしまったら営業的にはマイナスでしょう。しかし、これらの事故を恐れて情報公開をネガティブに評価するだけでは、時代の進展に取り残されてしまうかと思います。
これは、ファイリングや文書管理や機密文書の指定などを普段からきちんとやっているからこそできることです。一介の現場のウェブデザイナー(外注やアルバイトかもしれない)に事業継続性に影響のある情報の取り扱いを丸投げするというのでは、事故をわざわざ招いているとしか言えません。ふだんからファイリングやファイルのデータベース化をきちんと行って、事故を回避し、時代の要請にこたえられるようにしましょう。